『お召し上がれます』は蛇足敬語

以下の写真は、近所のスーパーで売っていたレトルト食品のパッケージに見つけた偽敬語です。

このような、敬語っぽいけれどもおかしな言葉遣いを「偽敬語」としてご紹介していこうと思います。

付けてはいけない「お」~蛇足敬語

蛇足敬語とは私の造語です。

蛇足は、なくてもいいものという程度の意味で使われます。しかしこの言葉の由来となった故事では、せっかく描き上げた蛇の絵に足を書き足してしまったためにその絵は蛇として認められなかったという話です。

つまり、せっかく正しい敬語であっても、そこに付かないはずの「お」を付けてしまっては敬語の体をなさなくなってしまいますよ、という意味を込めて、蛇足敬語と名付けました。

主体を立てる「お」は動詞に付かない

表題は「お召し上がれます」と可能の助動詞や丁寧さを表す助動詞が含まれていますが、それらを取り除くと「お召し上がる」になります。この段階で、既に敬語の体をなしていません。

いや、そうは言われても、ピンと来ないなぁという人のために、別の例を挙げましょう。

「召し上がる」という動詞はその動詞の行為を行う動作主体を立てる特定形です。「召し上がる」でいえば、食べるという行為をしているその人を立てる敬語です。同じ種類の敬語としては、「おっしゃる」「いらっしゃる」などがあります。この「おっしゃる」「いらっしゃる」に「お」をくっつけてみます。

>>>「おおっしゃる」<<<
>>>「おいらっしゃる」<<<

いかがですか?
文法的には全くこれと同じ構造の言葉が「お召し上がる」です。
更に言えば、「お」を付ける言葉が敬語でなくても構いません。動詞に「お」を付けても、決して主体を立てる敬語にはならないということをご覧に入れましょう。

>>>「お歩く」<<<
>>>「お考える」<<<

もちろん、可能の助動詞や丁寧さを表す助動詞を付け加えてもおかしさは減りません。

>>>「お歩けます」<<<
>>>「お考えられます」<<<

いかがでしょうか。主体を立てる「お」は動詞には付かないということをご納得いただけたでしょうか。

このパッケージを作った人も、きっとなにか引っ掛かるものがあったろうとは思いますが、周りに正しい敬語を教えてくれる人がいなかったのでしょうね。残念です。

それでは、また。


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