ChatGPTが世に出て以降、AIが目を見張る勢いで進化しています。しかし、こと敬語に限って言えば、AIは全くもって当てになりません。
今回はそんなお話です。
さて先週は、「お召し上がり方」は蛇足敬語であるという話をしました。
※蛇足敬語とは私の造語です。蛇足は、なくてもいいものという程度の意味で使われます。しかしこの言葉の由来となった故事では、せっかく描き上げた蛇の絵に足を書き足してしまったためにその絵は蛇として認められなかったという話です。つまり、せっかく正しい敬語であっても、そこに付かないはずの「お」を付けてしまっては敬語の体をなさなくなってしまいますよ、という意味を込めて、蛇足敬語と名付けました。
このとき、「お召し上がり方」をネット検索してみました。その際に表示されたAIによる概要がこちら。
AIはネット上にあるものを集めているだけ
①私の記事から
冒頭の三分の一は、昔書いた私の記事を引っ張ってきたようです。
>「お召し上がり方」は、動詞に「方」という接尾語が付いた派生語であり、名詞です。
この一文は合っています。そして、「お召し上がり方」は分解できないとも書きましたが、一切の説明を省略して
>そのため、「お召し上がり方」は分解できず
とつなげても、何がどう「そのため」なのか全く意味が分かりません。
素直な人なら、「なんで分解できないんだろう。一つの名詞だからってことかなぁ。まぁAIが言っているんだから、自分より正しいだろう」と受け入れてしまいそうです。
②別の記事から
文を分けることもなく続く文章は、実は私の書いたものとは関係なく、加えて、情報として間違っているとは言えないまでも不十分です。それが以下の部分です。
>「お召し上がりください」は二重敬語になります。「召し上がってください」で十分です。
たしかに「お召し上がりください」は二重敬語ですが、誤用ではなく、例外として認められた言い回しです。元と思われる記事でも、「間違いとはいえない」と結論づけていました。しかし、上記の説明では、あたかも誤用のように読めてしまいます。
③さらに別の記事から
>「召し上がる」は「食べる」「飲む」の尊敬語にあたります。
この一文に問題はありません。
問題は次です。
>「どうぞ、召し上がりください」といったかたちで使われます。
これは、元と思われる記事でも赤字で強調しており、正しい言葉遣いとして紹介されていますが、御用です。いえ、誤用です。
あ、やっぱり御用にして、次週、取り上げます。
AIが提示した敬語にはご用心
AIによる概要は、試験運用とされているので、これを責めるわけにはいきません。説明にも「生成 AI は試験運用版で現在も開発が進められているため、間違える可能性があり、実際間違えます。」と明記されています。
アイデア出しなどには便利なAIですが、正しい情報を教えてくれるものではありません。もっともらしい敬語を教えてくれるかもしれませんが、それは偽敬語の可能性もありますので、くれぐれも皆さま、ご注意くださいませ。
それでは、また。