「ある」「ない」を丁寧に言えますか?

最近の敬語は、とかく過剰になりがちで、不要な「お」の乱用や「いただく」依存症など目に余ります。

 

特にお客さまが相手だと、「ですます調」ではなく「ございます調」で話しましょうと指導している職場もあるかもしれません。

「ですます調」を使うのか「ございます調」でいくのかはもちろん会社側が決めることですが、指導したあと、実際にどのような話し方をしているかを見る必要があるのではないでしょうか。

もしかしたら、「ないでございます」「あるでございます」と言っている部下はいませんか?

 

例えば、ある小売店では「ですます調」を基本としていたとしましょう。

客から、「これの白はある?」と聞かれて、「あぁ、ないです」と答えても違和感はあまりありません。本来は、形容詞に「です」はつながらないので間違いですが、「です」は最もよく使われるゾーンなので、これを使わないのは非常に不便です。よって、正しい日本語として認められています。

とはいえ、これは多少くだけても許されるシーンでのみ使っていい言葉と認識しておくことをお勧めします。

同じ小売り店であっても、気さくな雰囲気や親しみやすさを目指す店であれば「ないです」のほうがいいかもしれませんが、信頼や高度なスキルを期待される店であれば「あります」「ありません」のほうが適切でしょう。

 

さらには、これが「ございます調」を基本とする場合、「ないです」の代わりに「ないでございます」と言っていたら、さすがに誰もが違和感を覚えるのではないでしょうか。さらに、「ないでございます」を言い慣れてしまうと、「あるでございます」にも抵抗がなくなるかもしれません。

 

「白はある?」と聞かれて「ないです」と答える店員も、きっと「あるです」とは答えないでしょう。でも、「ないでございます」を常日頃から使っている人なら、「あるでございます」と言っているかもしれませんよ。

また、誰か一人が堂々と過剰敬語を使っていると、それが間違っていても職場全体にじわじわと浸透していく傾向が見られます。浸透してしまえば、「あるでございます」に違和感を覚える人は周りにいなくなり、新入社員もあっと言う間に染まっていきます。

 

「ございます調」を基本とするなら、在庫を聞かれたときに「ございません」「ございます」と答えられるように教育しましょう。

その職場に入るまで敬語を使う必要のない人たちが増えた今、敬語を教えるのは企業側の責任ではないでしょうか。

 

それでは、また。