『猫語の教科書』に学ぶ敬語のエッセンス④〜目上が優れているとは限らない

世にも賢い猫が、なんとタイプライターを駆使して原稿を仕上げ、人間の家の乗っ取り方を指南する『猫語の教科書』。

猫好きにはたまらない本でしょうけれど、それだけでなく、実際に読んでみると驚くことに敬語のエッセンスが散りばめられていました。

なるほど猫があれほどに人間を魅了してやまないのは、見た目の可愛さに甘んじることなく、ここぞというときの敬意を十分に踏まえているからなのですね。

 

敬語は人を支配するためのものではありませんが、人間をいとも簡単に支配してしまう猫から学ぶ敬語のエッセンス、4回目の今回は、目上に敬意を払うけれど、目上が優れているとは限らないというお話です。


人間は猫より劣っている

人間は万物の霊長とも言われますが、果たしてそれほどのものでしょうか。

猫によれば、そうでもなさそうです。

 

猫が、家に入れてもらえることもある一方で家から追い出されることもあります。時には永久追放という憂き目に遭うことだってありえます。猫にしてみたら、人間を恨みたくなりますよね。そんな人間を、猫はどのように見ているでしょうか。

こういう災難は、人間が猫より優れているからではなく、劣っているから起こるのです。人間は動くのがきらいで、責任もいやがるし、おくびょうで怠け者で短気で、すぐパニックにおちいります。いつだって、自分が本当はどうしたいのかさえわかっていないんだから。(p.172)

こんな人が周りにいたらさぞ迷惑でしょうけれど、これはまさしく私のことではなかろうかと心当たりも満載です。

こういう欠点だらけの人間とどう付き合うのか、それもちゃんと教えてくれていますからご安心ください。

家族はちゃんと観察していなくてはいけません。イライラしているのを感じたら首をひっこめていること。(p.172)

パートナーに家から追い出されないための付き合い方の本に載っていてもおかしくない一文だと思いませんか。

敬意はありのままを受け入れる

敬意は相手を暴きません。なぜイライラしているのかを説明させ、それが理不尽だと説得するのは、良いか悪いかは別として敬意とは違うものです。

なぜってこういうときは(中略)何かをしたから、というだけでなく、これから何かをやらかすかもしれないという理由で猫をいやがるものだからです。(中略)猫がひきおこすかもしれない大惨事を想像しちゃうのね。(中略)そんなことをしようなんて、あなたは夢にも思ってやしないのだけれど、でもダメ。人間にとっては、想像したことは、起こったも同じこと。(p.173)

部下なら、目下なら、何を言ってもいいし何をしてもいいと思っているなら問題ですが、「明日の重要な会議に、コイツはまた遅刻してくるかもしれない!そしたらとんでもないことになるぞ!!」とパニックになって思わず口走った言葉をなんでもかんでもパワハラと命名されたら、それはそれでギスギスしてしまいます。

 

バカな人間ならあるよね、という範囲であれば、互いにサポートし合うほうがいいということもあるのではないでしょうか。そして、目上の不安を増長しパニックを誘発させないためには、ちょっとした工夫が有効です。対象を変えるのではなく、自分が変わるのが敬意です。

相手の目的を共有し、努力を見せる

どうしても吐きそうなのに、外に出してくれる家族がみあたらないときは、バスルームに行って、そこで吐くこと。(p.175)

同じミスでも、努力を見せれば評価は変わります。

「かわいそうに。猫ちゃんはトイレの中に吐こうとしたのに、とどかなかったのね。なんてえらいの。」(p.同)

同じ遅刻でも、「電車遅延だから仕方ないじゃないですか」と言われるのと、「電車が遅れて、、、駅から思いっきり走ったんですけど、間に合いませんでした」と言われるのでは印象が違いますよね。この差が敬意の有無です。

 

さて、ここまで、敬意とは相手が自分より優れているから払うものではないということを、猫が上手に説明してくれました。

そして、劣った人間のイライラやパニックをまともに喰らわないように「首をひっこめている」という点について、もう少し読み解きたいと思います。

 

それでは、また。