世にも賢い猫が、なんとタイプライターを駆使して原稿を仕上げ、人間の家の乗っ取り方を指南する『猫語の教科書』。
猫好きにはたまらない本でしょうけれど、それだけでなく、実際に読んでみると驚くことに敬語のエッセンスが散りばめられていました。
なるほど猫があれほどに人間を魅了してやまないのは、見た目の可愛さに甘んじることなく、ここぞというときの敬意を十分に踏まえているからなのですね。
敬語は人を支配するためのものではありませんが、人間をいとも簡単に支配してしまう猫から学ぶ敬語のエッセンス、6回目です。
毅然と立ち去る
前回は、目的を達成し、危険から距離を取り自分を守るための、首をひっこめる方法を例に挙げました。
しかし、いくら首をひっこめてもいくら我慢してもあなたを傷つけてくる人がいたらどうしましょうか。
そんな質問に、猫はこう答えています。
毅然として立ち去るに限ります。p.150
そりゃそうですよね。
でも、「石の上にも三年」とか「そんなこと言って、その後どうするの?」とか「あなたにも悪いところがあったんじゃないか」とか、いろいろ言われるかもしれないし、自分でも気になるかもしれません。
それはそれでありがたく受け止めればいいと思います。
それが一般企業なら、そのうちあなたかあなたを傷つける人のどちらかが異動になるかもしれませんし、3年我慢できれば異動願いも出せるかもしれません。
いやいや3年なんて我慢していたら心が壊れてしまう!というなら、そんな悠長なことは言ってられません。それでも、その後どうするかはやはり考えておいたほうがいいですし、ならば、それが考えられる元気があるうちに考えないと手遅れになります。自分に悪いところがあったと思っているなら別のところに行っても同じことが繰り返されますから直したほうがいいでしょう。どうせ辞めるつもりの職場なら、次の職場のための訓練と思って自分のコミュニケーション方法を見直し、いろいろ試してみてはいかがですか。もしかしたら、それだけで改善してしまうかもしれません。
前にも書きましたが、一番大事なのは自分なのです。
できれば笑顔で立ち去れるぐらいの余裕をもって行動しましょう。
もちろんそんな余裕がなければ、なりふり構わず立ち去りましょう。
会社には会社の、学校には学校の、コミュニティにはコミュニティの建前があり、そこの一員になるならその建前は受け入れなければなりませんが、受け入れられないなら建前を変えればいいだけです。あなたに合う場所が、きっとあります。
※もしあなたが立ち去られる組織側の人間なら、相手が笑顔だからといって気を抜いてはいけません。本当にその人は去りたくて去っていくのか。あなたが提示している建前はきちんと「きれいごと」として機能しているか。単なる上っ面の「きれいごと」だけを見ていて現実から目を背けていたとしても、目下にはあなたに教える義務はありませんから、自らを都度振り返らなければなりません。
さて、今回はちょっとイレギュラーケースへの対応について書いてみましたが、次回は敬語の根本機能である婉曲表現について猫に聞いてみましょう。
それでは、また。